階級にとりつかれた人びと―英国ミドル・クラスの生活と意見
 |
人気ランキング : 18,343位
定価 : ¥ 735
販売元 : 中央公論新社
発売日 : 2001-05 |
 |
アッパー・ミドル、ロウアー・ミドルが沢山出て来て読みにくい |
表記的な事ですが、重要ですよ。僕のつけたタイトル読みにくいでしょ? 目の神経使う本です。
だったら、アッパー中流、ロウアー中流、とか。Uミドル、Lミドルとか(これも見にくいか…)、なんか表記を工夫して欲しかった…
内容面は文章も退屈。でも中流といっても一枚岩じゃないよという事を新書で世に知らしめた事は、大きな意義がある。
実は日本もあからさまでないだけで、多分こういう区別はあるんだろうなと思い起こさせる。それだし、法廷弁護士クラスがアッパーミドルと言う訳で、今日本で中流崩壊というと、恐らくJロウアー中流(笑)が、ガラガラ崩れて労働者層に転落してるんでしょうな……
アッパーミドルは安泰と。逆に言うと分厚い中流層とか言っても、大半は、ロウアーミドルだった訳だ。これは日英で違いはないであろう…
最後ですが、基本的には、イギリス文化に興味有る人向けかと。イギリス経済に興味あっても今一と感じると思われます。
 |
グロテスクでもこれこそが英国の活力なのかも |
英国から帰国した後、だいぶ昔、この作品の参考文献にも出ている、john careyのthe intellectuals and the massesを読んだことがありました。面白いと思いながらも、かなりのわかりにくさを感じました。でも、今回、この作品を読むことにより、その残っていたわかりにくさが、かなり明確に解消されました。こんな参考になる本が日本でも出ていたのを知らなかったのは失態でした。著者の近著の”不機嫌なメアリー・ポピンズ”に最近読み、やっとこの本の存在を知りました。この作品は主に19世紀から20世紀初頭の大きな社会変動を舞台として、中産階級の間で、微妙な差異をめぐってアッパーとローワーとの間で繰り広げられた悲喜劇を取り上げています。何とかして差をつけようとする(drawing the line)は、もちろんどこの社会でも共通に見られる現象なのですが、英国におけるこの発現形態は、確かに”異様”です。でもこの微妙な線引き、そして作られた差異の持つ意味の継続的な転倒と風刺こそ、英国の知的活力なのかもしれません。本書の中のH.G. Wellsの部分はこれまで、日本ではあまり紹介されることのなかったこの特異な彼の別の側面をわかりやすく説明してくれます。
 |
社会格差が話題の今 |
著者は近代イギリスの文芸作品を、階層論を軸に分析している。
論述は周到かつ懇切丁寧、この分野の初心者にもすんなり読み通すことができた。
イギリス社会は労働者階級と貴族・保守階級だけではない。ひとくくりにされがちな「ミドル」クラスは、その内部に「upper」と「lower」を抱えているのである。
そして両者の間には、その成立の事情から社会・文化的に「越えられない壁」が存在している。その壁を乗り越えんとする「lower」達の悲喜こもごもがあり、また「upper」以上からの嘲笑と侮蔑が諸々の文芸作品に影を差している、と著者は指摘する
文芸・文化社会学の、また「lower」から見たイギリス現代社会史の優れた入門書だろう。本文に登場したものだけでなく、巻末には大量の参考文献も付記されている。おなか一杯になる新書だ。
 |
アッパーミドルとロウアーミドルの差が何をもたらしたのか |
イギリス文芸に現れる,階級のモチーフについてのコメント集。文芸作品のなかから階級文化が現れているところを羅列的に抜き出して,そのあらすじを紹介する体裁。
アッパーミドルとロウアーミドルはぜんぜん違う,との主題だが,その違いを述べることで何を主張したかったのか。産業革命も帝国主義も植民地も経済もアメリカも差別も金融も,何も出てこない。これでは,単にクラスを保存したい哀愁にひたっているだけだ。たとえそうだとしてもクラスを保存して,この著者は何を実現したいのか,その意図も出てこない。
せっかくミドルクラスは単一の階級概念ではないとの主張があるのなら,その区分が何をもたらしているのか,少しでもいいから著者の考えを聞きたかった。階級イメージのステレオタイプの紹介にとどまらない,もう一歩が欲しかった。
 |
稀な語り手 |
著者は英国で教育を受けてきた日本人である。そういう特殊な経歴を持った人が、階級意識にまつわるイギリスの内部事情を日本語で書いてくれたところに、この本の貴重さがある。
それを意識してか、資料の引用も日本ではあまり知られていない箇所が多く、これがかえって「イギリス人の知識」を示唆してくれる。題名は、ジョージ・オーウェルの言葉から引かれているが、仮にこの本が英訳されても、イギリス本国では自分たちを映してる鏡として自嘲的に読まれ、かつ評判になるだろう。
また、著者はもともと比較文学・文化が専門であるので、イギリス近現代文学の縦横無尽な解説や、雑誌、演劇、生活に至るまで闊達に書いており、読んでいくとそれまで抱いていた英国のイメージに、彼らの人間くささがどっと押し寄せてくるのを感じる。